日本の葬儀経営:現状と未来の課題
この内容はうちの葬儀チャンネル【葬祭ジャーナル】の「葬儀経済理論」で話した内容を更にわかりやすく解説しています。
葬儀業界における収益構造の分析と、今後の経営戦略のあり方を考察したものです。
高い利益率やレバレッジといった儲かるビジネスの条件を定義した上で、固定費が重くのしかかる葬儀社の現状を客観的に捉えています。
外部の市場環境を重視するSCP理論と、自社の経営資源に注目するRBV理論の双方を使い分け、変化する需要への適応を促しています。
特にコロナ禍を経て小規模化が進む市場に対し、従来の枠組みに囚われない戦術的な判断と情報経営の重要性が強調されています。
最終的には、不確実な未来において競争優位性を保つため、徹底した効率化と緻密な仮説検証が必要であると結論付けていますので是非全文をお読みください。
2020年に予想していた内容が2026年に的中しています。
これを深堀したものです。Podcast もぜひお聞きください。
葬儀経営の未来を解き明かす「構造」と「理論」

導入:理論に必要な「WHY」とビジネスの構造
- ビジネスにおける「理論」というものには、常に「WHY(なぜ)」が必要だというお話を何度もしてきました 。
今回は「理論ドリブン」と「現象ドリブン」、そしてそこから生まれる新たな発展やビジネスの展開について深掘りしていきます 。

- テーマは「構造的に儲かる産業と、儲からない産業」についてです 。このフレームワークに、これからの「葬儀社」を当てはめて考えていきましょう 。
第1幕:儲かるビジネス・儲かりにくいビジネスの条件

儲かるビジネスの5つの条件
- まず、構造的に「儲かる産業」とはどういうものでしょうか 。
米国では医療や飲食、日本でも多店舗展開をしない場合の飲食業、飲料業界、あるいは金融業界などが挙げられますが、米国で儲かるものが日本でも必ず儲かるとは限りません 。 - 儲かるビジネスの条件には、次のようなものがあります 。
- 一つ目は、収益率が高いこと 。
- 二つ目は、ランニングコストが安いこと 。
- 三つ目は、「レバレッジ」がかかることです 。
- 四つ目は、「個人でも稼げる仕組み」があることも重要です。
- そして五つ目は、薄利多売を避けることです。

- レバレッジとは、いわゆる「てこの作用」、つまり影響力のことです 。少しの力で大きなものを動かせる仕組みを指します 。
たとえば、100万円の自己資金で10倍のレバレッジをかければ1000万円までの取引が可能になりますが 、逆に失敗すれば元本割れどころか、すべてを失うほどの大ダメージを食らうリスクもあります 。
財務で言えば自己資本に対して他人のカネ(資本)で総資産を何倍にも見せる仕組みであり 、マーケティングの世界なら効果が何倍にもなるという意味になります 。
金融とは少し意味合いが違っても、「テコの原理」の本質は一緒です 。

他にも、会社組織でなくても個人で稼げるYouTuberやオンラインサロン 、あるいは弁護士や司法書士、税理士といった「資格があるビジネス(士業)」も該当します 。
2026年5月の時点では、Substackを利用した囲い込み型ビジネスが流行っていますね。
これらはAIの発展によって必要なくなると言われることもありますが、人と人とのビジネスであり、駆け引きのビジネスでもあるため、そう簡単に無くならないでしょう 。
ネットビジネス、EC、ドロップシップメント、アフィリエイト、ネットコーチングなどもこれに含まれます 。
一方で、アフターコロナにおいて微妙なのが「レンタル業」です 。
オフィスではWeWork、ホテルではOYOが大失敗しました 。
ファシリテーターがいれば上手くいくはずですが、レンタル業のいくつかは固定費が嵩むという弱点があります 。
私自身が2019年にWeWorkを抜けたのがその理由でした。その後、ServCorpやBiz Comfortも活用しましたが、どれも質は悪いと感じました。
- 逆に、構造的に「儲かりにくいビジネス」、いわゆる薄利多売の産業もあります 。
代表例は航空会社や旅客サービス、メーカー、あるいは先物取引などです 。
これらは固定費が高く、だからこそサーチャージなどの仕組みが必要になりますし、変動リスクが高いという特徴を持っています 。
アウトソーシングが可能ならいいのですが、そうなりますと「派遣」に頼ることになり、更に一定基準の質を維持することが難しくなります。
第2幕:葬儀社はどこに位置するのか?

では、私たちの関心事である「葬儀社」は一体どの立ち位置にあるのでしょうか 。
コロナ前(BC: Before Corona)の葬儀は、大きい葬儀と小さい葬儀に「二極化」していました 。しかし、コロナ後(AC: After Corona)は「小さい葬儀」「小さい式場」が主流となっています 。
長期的(LTE: Long Term Evolution)なロングテールで見れば、社会的免疫が確立されることで普通に戻るという予測もあります 。しかし現在は、そろそろ火葬場が規制をかける動きも見られます 。
- 10名以下のお別れといった小さい葬儀のみに制限され、立ち会いはほぼ無し、拾骨までウロウロすることは禁止され、控室の利用すらNGになるケースもありました。
こうした環境下で企業が競争優位性を保つためには、業務をルーチン化させて無駄を省き、勤勉性を持ち、数字の管理や経理を見られる仕組みを作ることが強く求められます 。
第3幕:経営フレームワーク「SCP」対「RBV」の適用

2つのフレームワーク
ここで、2つの経営フレームワークを当てはめてみましょう 。

- 一つは、市場環境が市場構造に直接・短期的な影響を及ぼすと考える「SCP(Structured Conduct Performance)」。
未成熟な市場では企業へのフィードバックが早いため、成果を出すにはPDCAサイクルを高速で回し、常にアップデートしなければなりません 。
- そして、その対極にあるのが、社内のリソース(内部の経営資源)に着目する「RBV(Resource Based View)」です 。SCPが市場に目を向けるのに対し、RBVは社内をベースにしています 。
これらを葬儀社にどう当てはめるか 。
まず「SCP」で考えると、日本の死亡件数は年々増加しています 。
- 2020年には138万人、2025年には160万人の死亡者数に達しており、この5年間だけで22万人も増加しました 。
- この先2040年頃まで、コンスタントに年間150万人くらいが亡くなる市場が存在するため、参入する価値があるように見えます 。
しかし、これを「RBV」の軸で捉え直すと別の側面が見えてきます 。

- 式場を持つ葬儀社の数や、葬儀社全体の既存リソースで、これから増える死亡者数を本当に処理できるのかという問題です 。
- リソースが足りなければ市場への参加者で補えばいいのですが、そもそもこれが「構造的に儲かるビジネスなのか」という疑問が残ります 。
- さらに、2025年には想像以上の式場が建設され、コンビニから葬儀場への用途変更なども行われています 。
結論:これからの葬儀経営に必要な「戦術」

結論として、葬儀社が構造的に儲かるビジネスかというと、私は「そうではない」と考えます 。
今や大きい式場は敬遠され、コンビニが葬儀場に変化しているほどです 。
ここ数年間はコロナの影響もあり、倒産や廃業が増え、M&Aも盛んに行われています 。
景気はすでにマイナスへと下方修正されており、他人への投げ銭(サポート)よりも、まずは自分の背に腹は代えられないという時代です 。
ここで「SCPとRBVのどちらが正しいか」を論じるのは野暮であり、不毛な議論です 。
重要なのは目的と手段の両立、すなわち「戦略と戦術」です 。
葬儀社にとって大まかな経営戦略はもちろん必要ですが、それ以上に毎日の「戦術」が欠かせません 。
つまり、日々の現場において必要なのは「情報の経営」です 。
- どういう人たちをターゲットにして、どのようなチラシを、どの地区へ撒くのかといった具体的なアクションです 。
- ビジネスには常に不確実性が伴います 。
- ハイリスク・ローリターンであるならば、それを避ける経営判断が必要です 。
- これは斎場をどこに出店するかという展開とも全く同じ話です 。
もしレバレッジが効かないのであれば、私たちは一度「ゲーミフィケーション」を取り入れ、仮説を立ててシミュレーションしてみる必要があります 。
これを行わずに突き進めば、待っているのは「ゲームオーバー」かもしれません 。










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