FCCJ−挑戦する世界の通信社

2018/01/23 日本外国特派員協会で夕飯を兼ねてAP通信社で元FCCJのPresidentでもある我孫子和夫氏と共同通信社の山口光氏の両名(二人ともFCCJ正会員)を迎えて出版した本「挑戦する世界の通信社:メディア新時代に」の本を紹介した。

APもReuterも共同通信社も基本はB2Bで新聞社に情報を提供している。
故にB2C(末端)に提供すれば新聞社のビジネスに割り込んでしまうので情報の卸しに徹底している。
確かに一部直接エンドユーザーにも提供しているが、これは新聞社とコラボして情報を提供しており、費用や売り上げは折半する形で得ているとのこと。

さて、本の出版会見でもあったが、APと共同通信社はどう言う組織なのかの説明をしてくれた。
普通の人ではわからないだろうと。そもそも日本のAP(Associated Press)は56社(55局とNHK)で成り立っており、地方のノンキー局の110社を含めると巨大な組織である。それ故に記者の情報は新聞社に卸すことになっている。
共同通信社も同様に情報を加入業者に提供している。

まず我孫子氏がメディアの失敗(落ち度)を説明。
デジタル社会がこうにも発展するとは誰も思っていなかった。
1990年代にデジタル革命が起こっても、ここまでの急激な発展は想像外であった。
テキストから始まり、次にテキストと写真、そして現在はテキスト+写真+映像のすべてを提供せねばならない時代になった。
通信速度が飛躍的に上がり、ブロードバンド化が進み、更にモバイル環境も進んだおかげで誰でもメディアになれてしまう時代がこうにも訪れるとは。そしてソーシャルメディアとモバイルがエコシステムのレベルを引き上げたのは言うまでもない。更にニュースメディアとして大きな課題は、一般の方々がニュースを作り上げてTwitterなどのSNSを使い拡散している。その場合、報道機関はその情報が正しいのかどうか、Buzzワード(流行り)がどうなっているのかを検証する必要が出てきた。

コンテンツはお互いに共有するようになり、さらにこの情報を吸い上げて集約するGoogleやFacebookなどが現れたと。
人々は情報におカネを支払うことを忘れてしまい、新聞メディアの経済も年々下がる一方になた。

このような情報はGoogleなどですぐに拾われ拡散されるので、メディアはAIを活用する時代にもなってきたと我孫子氏は力説した。すでにAIを活用しアラートをかけるところも出てきていると。
更にAIを活用すれば、瞬時にフェイクニュースかどうかも判断できるだけではなく、AIに文章を書かせることもできる。
すでにそのようなものも出来上がっており、ダイジェスト版から長文までAIが書き上げてる技術まであり、活用しないことはもったいないと。そしてAIを活用し、自然言語処理をすれば何カ国語にも翻訳が出来る。(同時通訳の時代もすぐそこにきている)。

このような技術をいち早くニュースエージェンシーが導入することで新聞の購買力が上がる。
しかし、そこには新聞媒体のビジネスモデルも必要不可欠であると。
質疑応答時間で、我孫子氏は、アメリカでは新聞媒体のビジネスモデルは広告で成り立っており、購買力(スブスクリプション数)ではないので、広告ビジネスモデルが破綻し、更に購買数が減っている時代で新聞社はジリ貧状態に陥っている。日本の場合は、末端で配達する取次店があり、これらの販売店を維持させたいがため、デジタル版の金額を上げているとかで購買数を維持していると。

山口氏は、OANA(Organization of Asia-Pacific News Agency)の説明をされた。
ポスト工業革命のあと、日本のニュースエージェンシーはどう変わらねばならないかの問を我々にも投げかけた。
インターネットがメディアに大きく変化をもたらしたのは言うまでもない。
そこについて行けなかったメディアの敗因でもある。

マルチメディア、マルチチャンネルの時代だが、世界ではまだ27億の新聞購読者数がいるとのこと。これは40%市場とのことだ。主にインド、中国、日本などの国々だ。印刷部数を保持しているが、それでも年々下がっている。
先ほど、我孫子氏が言ったように日本は新聞配達している末端の会社を維持するためにあらゆる手段を使っていると。
(余談だが、昔のように洗剤1ケースを配るとかができなくなったのは言うまでもない)。

世界のGNPを現在、引っ張っているのはアジア諸国でもある。
56%のGNPがアジア諸国からとのことだ。
すでに市場はアジアに移ってきたのは目に見えている。

そこには我孫子氏同様に、ニュースエージェンシーはAIを駆使する必要があり、ニュースを提供するしかないだろうと。

とくに、Facebookなどでニュースが無料に流れている時代になり、人々はニュースに対しておカネを支払わなくなってきた。そしてモバイル環境が発達したおかげで、新聞を読む人が圧倒的に少なくなった。今、電車の中を見てもわかるように新聞を読んでいる人は誰もいない。ここにメディアは気づく必要がある。

そして、ニュースの信憑性はどうなのかと。

追伸:
ニュースの信憑性も必要不可欠だが、我々読者も批判的思考でメディアに接する必要があるのでは。
誤字脱字がパソコンの画面上で発見されにくく、逆に印刷物にすると見つかるのは、人間の心理学にも起因していると言われている。
光が投影されてくるものは受け入れてしまうが、反射して見ているものは比較的疑心的に見ているからだと。
そう言う意味ではメディアがテレビやラジオにて民衆をマインドコントロールすることは紙媒体よりも楽であることを肝に銘じる必要があると、私は思う。