ファンに愛されるチーム作り

ファンに愛されるチームづくりの道のり

2017/03/13 FCCJ 朝会 横浜DeNAベイスターズ全代表取締役社長 池田純氏の講演がありました。
池田純氏は現在41歳。私よりちょうど10歳年下です。
そしてDeNAベイスターズの社長を任されたときが35歳!
この日本の長老野球界で35歳の社長!
調べたところ、三木谷社長が当時楽天ゴールデンイーグルスを設立したのが39歳くらいの時です。
確かに設立と事業を引き継ぐのは大違いですが、社長として最年少だったはずです。

さて、今回は前社長が正会員のご紹介により講演をいただきました。
DeNAとは5年契約で社長を務めました。そして、次のステップもやはり社長になりたいと。
前社長は、オーストラリアでワーキングホリデーを使い、英語を学びに行ったが、結局サーファーになって帰ってきただけだったと。運動は水泳をされていたので泳ぎは得意。その後、点々として博報堂にてマーケティングと貿易を学ばれて、どうしても社長になりたいと強い意志にて今回、DeNAにスカウトされ(DeNAはご自身の会社の顧客先でもあった)、マーケティングとコンサルティングをして、DeNAベイスターズの社長に。

DeNAベイスターズは当初年間110万人の観客だったが、5年間で倍近くの190万人まで増やした。
一番のネックが横浜スタジアムのキャパが3万人と割りと小さい規模だったからだ。
ちなみに私の母校のボストン大学のWest Campusの Nickerson Field(ここで卒業式も行った)は1万人チョイだった。

この大きさがネックでもっと観客を入れたくても限界値が小さく、できなかった悔しさも残ったと。
池田氏が2015年度で去るときには72ゲーム中54ゲームが満席の実績を残されたとのことだった。
常にチケットが売り切れであり、観客に申し訳ないと言う気持ちが残ったので外でイベントを開催したりしてDeNAベイスターズを盛り上げたとのこと。

更に大きな課題は横浜スタジアムがDeNAベイスターズの所有ではなかったので、運営でチグハグがかなりあった。
そこで株式TOBを実施。当時の株主は横浜銀行ともう1社(確か住友系といったみたいだが–ここは書き留めなかったので間違えがあるかも知れないのでご了承願いたい)で数パーセントの保有。あとは800人くらいの個人株主、それも70年代から持っていた人たちで1株の価格が250万程度であり、500万を提示したら素直にOKを頂いたのですんなりと買えた。
それも76億円で購入できた。

これにて一年半前にDeNAベイスターズが運営することになりシートの色や外でのイベントを自由に開催することが出来たのと、ビールの販売、グッズの販売もすごく楽になったと。余談だが、北海道日本ハムファイターズも運営が違うのとグッズの売上のロイヤリティが札幌市にすべて吸い取られると苦言をしているのを読んだことがある。

さて、池田氏の5年間での成果が:
球場を満席にすること、黒字化すること、横浜スタジアムを買収すること、そしてA級チーム(最下位脱出)することであった。

これにより、経営を強化させ、未来展望にすることが可能になった。
当時は「なぜこのユニホームの色?」と聞いたら「強い色みたいだから」と言う主観的な回答しか球団にはなかったのでデータに基いて運営を始めた。これは親会社のDeNAがゲーム会社でもあり、市場の動向をネットを通じて把握する能力があったので、活用できたとのこと。

次に、コーポレート・ブランディングが必要であった。
つまり、選手だけではなく、チーム愛が欲しいと。
スター選手が移籍してしまえばファンたちも離れてしまう。
これはどのスポーツも同様だが、チーム愛をどう築き上げるかが課題であったと。

そこにはきちんとしたマーケティングが必要であり、前任者は数字を把握せず曖昧な経営判断をしていたので、なかなか黒字化に出来ない状態に陥っていたからこそ、強い選手も来ない、チームも盛り上がらない、人気がなかった。
池田氏によって改善された。

まず「アツイぜ!チケット」を販売。
不満なら返金制度。
当初1000枚くらい売れた。そして不満があってもファンは優しいから言ってこないだろうと。
それは大ハズレで850人くらいがチケット代の返金を求めてきたとのことで、衝撃を受けたと。
逆にそれは、それだけの人たちがDeNAベイスターズに期待をしていたと。
これはチャンス!熱くなりたい人たちがこれだけいたと言うことでもある。
そこでビッグデータを活用しマーケティングを行い、ベイスターズラブを作り出した。

当時は女子ファンが多かった北海道日本ハムはどうやってこうなったか、そしてカープ女子がどう出来上がったかを考えてみたが明確な答えは出ず、しかししっかりとしたマーケティングだろうと。
ビッグデータの調査の結果、DeNAベイスターズファンは20代、30代の男子だったそうだ。
そこでターゲットを絞って、相乗効果を得ることにしたら、成功したと。

ターゲットを明確に絞ることによってマーケティングが一本化し、更に経営がスムーズに行くようになったと。
つまり、この池田氏の「アクティブサラリーマン」層が動くことによって他の層も芋づる式に引っ張り出され、売上アップに繋がったとのこと。つまり無駄なエネルギー消費を抑えることが出来た。

そして、ビジネスモデルを別の球団を見るのではなく、TDLやランドマークタワーなどを調査し、どのように集客していたかを分析。ハマスタを買収することで、手洗いを綺麗にすることも出来たり、外でのイベントでビヤガーデンを開催し、このアクティブサラリーマンやオヤジ連中との一体感を得ることでチーム愛を向上させたと。

コーポレート・ブランディングには人と街と企業をつなぐストーリー性が必要である。
横浜と言えば「元町、中華街、赤い靴、港、崎陽軒(日本で一番売れている弁当)、外人(偉人)」であり、ベイスターズではなかった。これをどうしてでも繋ぎたかったので、ユニホームを大洋ホエールズ時代の「YOKOHAMA」と書かれたものに戻したり、色々と工夫し、今のDeNAベイスターズがある。

今後、池田氏は大学のスポーツに注目して欲しいと。
熱くなる市場はそこにあると。