森美術館の都市と文化の考え

日本外国特派員協会にて朝会があり、今日のゲストは森美術館の南條史生館長であった。

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森ビルは2003年に都市開発にて美術館を開いた。
今年で16年目である。
その中で、都市と文化の融合、そして文化とは何かを模索している。

海外ではローカルのアートを展示する時、公共の場、廃校、古民家や廃墟となった住宅を利用し、多くの目に触れるように展示している。だからこそ、運営が安く出来るところもある。日本もそれを見習うところがある。確かにこれは良し悪しのところがあるが、ここでは述べない。

美術館の運営は、米国では国立でない限りは民衆による寄付などで賄える。そしてヨーロッパでは国の予算で運営。
では日本では?これがまた中途半端であり、日本の税制制度で寄付金控除の面倒臭さなどが災いし、小さいところはなかなか運営が進まない。森美術館も同様であり、森ビルがスポンサーであり、毎年5億〜10億円くらいの運営資金が入るが、自前で1億円くらいの資金を集めているとのこと。
更に、国が定める補助金を利用するかと言うと、例えば高額美術品の移動にかける保険金などの費用を賄うとすれば、50ページくらいある申請書を提示しないとならなく、面倒が重なり、国の補助金を使う団体(とくに新聞社が主催する美術展示会)が利用するのを諦めるとのことだ。
すると国は、あるのに使わないので、いらないだろうと言う判断に持っていく悪しき習慣がある。

さて、森ビルとしてはアーバンリサーチと言うのを行っており、都市のランキングを研究しているところがある。
都市戦略研究所 http://mori-m-foundation.or.jp/wordpress/ius

ここで東京には何が必要かと。
2020年の未来の東京はどう言うところかを調査とシミュレーションしてみた。

http://mori-m-foundation.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/09/The-Global-Power-City-Index_Simulation-of-the-policy-effects.pdf (リンクはPDFなので張らないのでコピペしてください)

そして今回の調査で2025の東京はどうなって欲しいかと。
成長 (Growth) 、住みやすさ (comfort) 、維持性 (sustainability) 、そして多様性 (diversity) が必要だと調査結果が出た。

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そこで驚いたのが「多様性」?日本人において多様性と言う答えが31%も返ってきたと言うことだ。
そうなると、日本人の1/3は必要だとわかっているけど、それが満たされていないと認識しているとのことだ。
そして、なぜトップ3が常にロンドン、NY、パリなのかも。
ちなみにロンドンとNYが2012年にて順位を入れ替わっているのは、ロンドンオリンピックにてインフラと都市設計が変わり、住みやすくなったと言うことみたいだ。

そこで、森美術館としては、都市と文化は互いに混じり合ってお互いの相乗効果にて成長せねばならないと。
これは、森ビルの基本概念でもあるらしい。
東京と言う大都市の一つの問題は広すぎる。
そして、都内で働く人達は通勤だけでストレスがかかり、更に仕事効率が悪くなるので、もっとコンパクトにする必要があると。
では、コンパクトにするには、やはり上に伸びるしかない。
つまり、タワーコンセプトだ。
ゆえに、森ビルには居住地もありオフィスもあり、スーパーもあり、多様な生き方ができる仕組みになっていると。

更に、森美術館にて誰がこの展示会をやるかやらないかの指導や支持を出しているかなのは、実はキュレーターが力を持っているとのことだ。確かに取締役会の会長である森夫人もいれば、館長の南條史生氏も入っているが、キュレーターが意見を言い、美術館のアートを展示しているとのことだそうだ。
そして森ビルとしてもアートを大勢の人に見て、感じてもらいたい意向もあり、自分たちの敷地内の表に色々と展示している。そこから大勢の意識改革を図ろうと。

そしてもう一つは、どんなモノでも海外から日本に入ってくると、Japanizeされてしまう。
食文化が一番良い例かも知れない。
アートも例外ではない。ここがまた面白いところでもあるが。

では、私としては、どうやって今後文化と芸術が都市開発に影響を与えていくかを考えたら、日本人が現状を把握する必要があると思う。もっと気軽にアートに触れられるようになる必要がある。
ちなみに、先日汐留美術館に行った。
入場料が掛かるのは仕方ない。私としたらぜひ取って欲しいと思う。
日本はどうしてだか、美術館だけではなく、とくに科学館の教育の分野にお金を支払う気質ではないと感じているからだ。
もう一つは、私も葬送文化を研究する団体の常任理事を務めている中、文化と都市の融合も必要だが、文化がなければ都市生活もバランスが保てないと感じる。そこには、人と言う媒体があるので、文化(アートもサイエンスも含めて)都市設計を補う必要があると思うからだ。